為替レポート

11月20日~11月24日週

【為替の動向】
ドル/円(24時間)
11/20(月)11/21(火)11/22(水)11/23(木)11/24(金)
OPEN149.549148.365148.387149.526149.562
HIGH149.986148.595149.750149.692149.712
LOW148.090147.150148.009148.886149.190
CLOSE148.382148.372149.531149.567149.460

先週のドル円レンジ:147.15円~149.99円

11月14日 IMM通貨(円)先物動向
円:130249の売り越し 前週比26209枚の売越増(更新なし)


≪先週の相場展開≫

 さて、先週の相場展開は、
 11月22日ドルインデックが103台前半から104台前半になった。10月までの積みあがったドル買いのポジションの調整が終了したとの観測から買い戻しが入ったようだ。しかし、イスラエル・ハマス紛争の休戦がうまく進まず、アラブ諸国の代表としてカタールが交渉の基軸になっている。米国の外交努力としているが、イスラエルをコントロールできていない。ウクライナも同様で、国際秩序の指導力低下がドル安要因となっている。ドルインデックスは103.4172、円ドルは149.460円で取引を終えた。
 以下参考記事として
 『イスラエル軍、ハマス標的発見なら南部含めガザ地区全体を攻撃=報道官』(11月17日ロイター)イスラエル軍のハガリ報道官は17日、イスラム組織ハマスの標的が見つかれば、 ガザ地区南部を含め、イスラエル軍はどこであろうと攻撃すると述べた。
 『米中商務相会談、米国が国家安全保障は交渉の対象外と指摘』(11月17日ロイター)、レモンド長官はまた、米国の輸出規制は対象が狭く、中国の経済成長を封じ込めるためのものではないと述べたという。
 『米軍が敵対勢力を殺害、弾道ミサイルに報復と発表』(11月22日CNN)イラクのアサド空軍基地に駐留する米軍と有志連合軍に対して20日夕刻に短距離弾道ミサイルが発射されたことを受け、米軍機が車両を銃撃して敵対勢力を殺害した。米当局者が21日、CNNに明らかにした。イラクとシリアに駐留する米軍と有志連合軍に対する攻撃は、10月17日から11月21日までの間に少なくとも66回に上り、アサド空軍基地も何度か標的にされていた。20日は弾道ミサイルに先立ち、同基地が一方的なドローン攻撃を受けたが、負傷者はなく、インフラにも被害はなかったと米当局者は話している。
 『米国株式市場=反発、利上げ終了期待や景気巡る楽観的な見方で』(11月22日ロイター)米国株式市場は反発。米連邦準備理事会(FRB)による利上げ終了への期待や米経済は引き続き底堅いという楽観的な見方が支援した。22日に発表された一連の米指標は、景気が減速しつつも、リセッション回避に向け十分な強さを維持している可能性を示唆した。LPLファイナンシャルのチーフグローバルストラテジスト、クインシー・クロスビー氏は「市場にとり総じて堅固な背景がある」と指摘。「経済や個人消費を巡る懸念にもかかわらず、持続可能性があるというシグナルだろう」と述べた。
 『NY外為市場=ドル上昇、失業保険申請件数の減少受け』(11月22日ロイター)終盤のニューヨーク外為市場では、ドル指数が2カ月半ぶりの安値から切り返した。新規失業保険申請件数が予想以上に減少したことを受けた。CMEのフェドウォッチによると、フェデラルファンド(FF)金利先物市場は米連邦準備理事会(FRB)が12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合で利上げに踏み切る可能性は基本的にないとみている。また、5月までに利下げが実施される可能性を50%以上としている。
 『NY外為市場=ドル指数軟調、ドル/円横ばい 薄商い』(11月24日ロイター)ニューヨーク外為市場では、米経済指標で雇用の減速が確認されたことを受け、ドル指数が低下した。日本円は対ドルでほぼ横ばい。感謝祭の祝日の翌日で米株式市場などが短縮取引になる中、商いは薄く、狭いレンジ内での動きに終始した。ラボバンクのシニア外為ストラテジスト、ジェーン・フォーリー氏は「米経済が景気循環の下降局面にあることを示すかなり多くの証拠が経済指標で示されている」と指摘。
 『アングル:ブラックフライデー、物価高と金利上昇が重し、ガザ抗議活動も』(11月24日ロイター)米国発の恒例の大規模セール「ブラックフライデー」が24日に始まり、小売業にとって重要な年末商戦が幕開けした。ただ米国では、長引くインフレと金利上昇で消費者が圧迫される中、年末商戦の消費の伸びは過去5年間で最小になると予想されており、多くの大手小売業者が年末商戦向けの臨時雇用を手控える動きなどが出ている。
 『米総合PMIの雇用指数が縮小、2020年半ば以降初-S&Pグローバル』(11月25日ブルームバーグ)雇用削減は製造業以外にも広がっている-S&Pグローバル11月の米国製造業・サービス業を合わせた総合購買担当者指数(PMI)統計(速報値)によると、雇用の指数が2020年半ば以降で初めて縮小圏に陥った。S&Pグローバルが24日発表したもので、低調な需要と高コストが背景にある。
 『ECB、今は手を休め引き締め効果の見極め可能-ラガルド総裁』(11月24日ブルームバーグ)ラガルド氏はフランクフルトで開かれたドイツ連邦銀行のイベントで、「われわれは既に多くを行った。これまでに使用した弾薬の規模を踏まえ、ECBがどれだけ長くこの水準にとどまるのか、ここから上がるのか下がるのか、どのような決断をしなければならないかを判断する上で、弾薬がわれわれの経済生活にどう影響していくのか。そのような観点から、給与や利益、財政、地政学的な動向など市民生活の要素を注意深く見守ることができる」と論じた。
 『米国が中東の政府系ファンド監視強化、中国絡みの取引巡り-関係者』(11月24日ブルームバーグ)バイデン米政権が中国と密接な関係にあると思われる企業の検証を広範に進める中で、中東の政府系ファンド(SWF)による米国での取引に対する監視が強まっている。事情を直接知る関係者が明らかにした。バイデン政権は閣僚レベルでアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ投資庁やムバダラ・インベストメント、サウジアラビアのパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)の取引を含む6件余りの案件を調べているという米国の対米外国投資委員会(CFIUS)は今年、国家安全保障上のリスクがあるとの懸念から、数十億ドル規模に上る取引の幾つかを審査している。非公開情報だとして関係者が匿名を条件に語った。米財務省の報道官は、CFIUSは米国の国家安全保障を守るため、その権限の範囲内で必要な全ての行動をとることにコミットしていると述べた上で、「法律と慣行に従い、CFIUSは審査中か否かを問わず、取引について公にコメントすることはない」と説明した。
 『ガザ人質解放の裏に米外交努力、戦闘休止延長「現実的」=米大統領』(11月24日ロイター)バイデン米大統領は24日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスに拘束されていた人質24人が解放された背景には米国の外交努力があったと述べた。また、現在の戦闘停止が延長される可能性は「現実的に」あるとした。その上で、これは始まりに過ぎず、今後数日間にさらなる人質解放が実現するとの見通しも示した。ハマスに拘束されている米国人が解放されることへの期待も表明した。
 世界最大の新型コロナウイルス感染国米国(23年03月10日時点で感染者数10380万2702人、死亡者数112万3836人)となっている。(ジョンズ・ホプキンス大学は、2023年3月10日にデータの更新終了。NHK)
 WTI原油先物は75.195ドル台となり、ドルインデックスは103.4172、円ドルは149.460円で取引を終えた。

今週の予想

今週のドル円予想レンジ:146.00円~150.00円
ピボット分析(日足ベース):148.93円~149.88円(11月27日)


≪相場の背景とチェックポイント≫

(11月13日更新)
≪コロナ・パンデミック・耐性菌・後遺症≫
新型コロナ(オミクロン変異種)の感染拡大は継続している。新種「BA.5」の変異種(派生型の「BF.7」・「BQ.1」と「BQ1.1」・「XBB.1.5」・「BXX,1.5」他)の感染拡大が続く。パンデミックは終わっていない。9月14日、『米疾病対策センター(CDC)は14日、今年の新型コロナウイルス感染症と呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染症、インフルエンザによる入院患者総数は昨年並みで、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)前の水準を上回るとの見通しを示した。』(9月14日ロイター)日本では、やっと、シオノギの治療薬が承認され、その普及が期待される。今後、重傷者・中等傷患者が減少し医療機関の逼迫リスクの軽減効果もある。『塩野義製薬、新型コロナ薬「ゾコーバ」に後遺症抑制効果』(日経)基礎疾患者・高齢者の死亡急増が報道されている。
別件で、『コロナで悪化、耐性菌対策加速を サリー・デイビス氏』(4月12日日経)薬剤耐性(AMR)関連の死者数は世界で年間400万人以上に達する。心臓病、脳卒中に次ぐ死因の第3位となっており、「静かなパンデミック(世界的大流行)」とも呼ばれる。新型コロナウイルスの感染拡大に気をとられている間に抗菌薬の使用が韓国などで劇的に増えた。結果として病原菌の耐性は高まり、状況は悪化したと考えられる。
一方、『コロナ後遺症、パンデミック以上に警戒必要-呼吸器以外にもリスク』(22年12月19日ブルーンバーグ)『コロナ後遺症の「脳の霧」 シナプスの破壊が一因か、ナショナルジオグラフィック』(22年12月26日日経)『コロナ後遺症かも? 知っておきたい症状や回復見込み』ナショナルジオグラフィック(1月23日日経)
『米政府、50億ドル投じコロナワクチン開発加速』(4月10日ロイター)「われわれのワクチンは重症化や死亡を防ぐという面では依然として高い効果を持つが、時間の経過とともに感染や伝染を抑える効果が低下している」と指摘。「新たな変異株の出現や時間の経過に伴う免疫力の低下は今後数年にわたり、われわれの医療制度にとって課題となり続ける可能性がある」と述べた。
コロナによる後遺症で感染後、就業に問題が生じているとの報告もある。
≪機密文書漏えい≫
『ウクライナでの両軍死傷者すでに35.4万人、長期化も=米機密文書』(5月12日ロイター)『米FBI、機密文書漏えい巡り空軍州兵を逮捕』(13日ロイター)これまでのウクライナ戦争を含めた報道の真偽に疑問符が付き、さらに同盟国へのスパイ行動が明らかとなった。米国への信頼感に疑問符が付き始めた。さらに報道記事が小出しになっているのが気になる。6月7日『パイプラインのガス漏れ、ウクライナ軍の破壊計画を米が把握か』(6月7日CNN) 昨年9月にロシアと欧州を結ぶ海底パイプライン「ノルドストリーム」で起きた大規模なガス漏れについて、ウクライナがその3カ月前から攻撃を計画し、米国も欧州の同盟国を通して計画を把握していたとの情報が浮上している。『海底パイプラインのガス漏れの捜査、最終段階に スウェーデン検察』(6月15日CNN)ウクライナ戦争の行方によるが、米国指導力維持の目的でスウェーデンのNATO加盟問題を絡め闇沙汰にする可能性がある。ベトナム戦争時の漏えい事件と同様に・・・。
≪世界経済≫
ウクライナ戦争に起因する食糧危機・エネルギー価格の急騰は、世界各国の物価上昇となった。民主主義・人権問題を標榜し米国中心に欧米諸国ロシアに対して経済制裁を加えたことが始まりである。昨年2月のウクライナ侵攻をきっかけに経済・金融制裁を強化してきた。ロシアの小麦・肥料・石油・天然ガス等の資源の世界におけるシェア(影響力)があまりに大きかったこともあり各商品価格の高騰を招いた。ロシア産以外の限られた資源取り合いとなってこれらの資源価格が上昇した。これが食糧危機・エネルギー危機を招いた原因である。最終的に各国でインフレ(物価上昇)を呼び込んでしまった。これまで、安定的な資源供給国としてきたロシア・中国(レアアース等)を遮断したことから起きた現象である。需給関係を説明するアダム・スミスの『見えざる手』のように需給バランスから物価上昇が起きたのではなく政治的要素(世界覇権に関連する)で目に見える形で起きた現象である。インフレが発生し、その対策として各国中央銀行は利上げを実行、今に至っている。通常の教科書的な経済金融政策では常識とされてきた理論であった。しかし、経済失速による効果が期待されたが一向にインフレが収まっていない。その理由として、需給面でのモノ不足による一般的な関連と異なり人為的な政治的要素による規制で発生した現象であるため、商品相場の価格が高止まりとなり、適正価格への調整機能が効かない。
金融当局者は政治に口出しできないため、この現象を見て見ぬふりするしかなく、目先の企業倒産・失業者の発生を期待して利上げにまい進するしか方法がない。そのあおりは各国国民に及び貧富の格差を広げている。米国の治安が不安定になっている一因であろう。国民目線での経済運営がなされていないのが現実である。
企業経営者にとって政治的要因で対象国の企業・個人に各種の制裁が突然行われ、それまで企画推進してきた計画が頓挫。そのため積極的な投資は制限されている。政治的要因に振り回されているのが現状のようだ。企業は利益確保のため、原料のコストアップ分を商品販売価格に上乗せして販売している。消費者の懐具合を勘案しながらの販売となっている。
消費者は我慢強く節約志向で生活している。販売価格の適正水準が問われる。零細・中小企業は別として大型倒産がないことが幸いしている。米中対立が表面化して以降、中国に集中していた生産拠点を東南アジア・インド等に分散していることもある。政治的要素の弊害を緩和する要素となっている。
雇用・賃金について、欧米のように自由に転職する社会構造になっていれば賃金アップも可能となる。雇用環境の違いもあり、企業の利益率が高かったこと、その利益幅も日本に比べて大きかったことから比較的スムーズに賃上げを行えた理由としてあげられる。しかし今後、賃上げが継続できるか試されるであろう。
世界秩序は、これまで欧米諸国を中核とする経済・政治の核組が形成され、下部の組織として後進国を利用する仕組みとみなしてきた。当然のこととして組み込まれてきたものである。軍事・政治問題をわきに置いて、自由な経済活動を標榜するのが先進国とされてきた。ソ連崩壊後、軍事面・経済面で圧倒的な優位性にあった米国中心に世界経済の運営がなされてきた。グローバルスタンダードとして会計基準・株式資本主義・金融システム等を構築。経済・政治のリーダーとして君臨してきた。しかし、ロシアは豊富な資源を活用して経済を復活させてきた。中国は資本主義の手法を取り入れ経済大国となった。軍事面では、ロシアは核兵器を含むソ連時代の軍事力を継承、中国は経済力を背景にして軍事力の増強を図り、最先端技術の保有を図り、戦闘機・空母等米国に対抗できるまで増強、さらに、独自の宇宙ステーションを保有するまでとなった。専権主義国家であるため予算はそれほど気にする必要がない、鉄鉱石等の資源もあり、自国技術による生産のためコストは低いと思われる。このような状況下、ロシアによるウクライナ侵攻が始まり対抗策としてウクライナへの軍事支援と同時に金融・経済制裁を発動して今に至っている。同様に『安全保障』を題目に中国に対しても関税を中心とした制裁が進み、台湾の保有する半導体の最先端技術獲得と米国生産を推進している。この結果、サプライチェーンの分断が生じている。
9月9日米政府は、インドから中東を経由して欧州までを鉄道・海上輸送網で結ぶインフラ計画に関する覚書をインド、サウジアラビア、欧州連合(EU)などと結んだと発表した。「インドからUAE、サウジアラビア、ヨルダン、イスラエルを経由して欧州に至る海上輸送と鉄道を結ぶ」と説明した。(日経)
≪中東地区≫
『サマーズ氏、米国の孤立化に警鐘-中ロや中東で「不吉な」兆候』(7月15日ブルームバーグ)サマーズ元米財務長官は、米国が国際的な影響力を失いつつある「不吉な」兆候に警鐘を鳴らした。「分断の受け入れが進んでいる。そしてさらに問題なのは、われわれの陣営が組むのにベストではないとの意識が高まっていることだ」と発言。ある途上国の人から「中国からは空港が得られる。米国から得られるのは講釈だ」と。
『サウジアラビアとイランが外交関係回復へ、中国で合意書に署名』(3月10日ブルームバーグ)の報道があった。中国・サウジアラビアを基軸とする中東地域の再編成が始まった。米中の覇権争いの側面でドル安要因となっている。米国が保護するイスラエルの存在意義が問われておりパレスチナ自治区への攻撃が激化している。中東戦争時の対立国(イエメン・イラン・シリア等)の結束が進む。米国の中東地区における指導力の低下が表面化しておりドル安要因となっている。
さらに『BRICS、多極化世界で主導力発揮し大国に対抗 外相会議が開幕』(6月1日ロイター)『BRICS会議、加盟希望のサウジ・イランなど十数カ国が参加』(6月2日ロイター)サウジやイランのほか、アラブ首長国連邦(UAE)、キューバ、コンゴ民主共和国、コモロ、ガボン、カザフスタンが代表者を派遣した。エジプト、アルゼンチン、バングラデシュ、ギニアビサウ、インドネシアの代表はオンラインで会合に参加した。
≪イスラエル・ハマス紛争≫
23年10月7日より始まったイスラエル・ハマスのガザ地区での紛争について
『「イスラエル・ハマス戦争」根源的問い、誰のパレスチナか-QuickTake』(10月17日ブルームバーグ)オスマン帝国の支配下で宗教的共存の時代が第1次大戦の終盤まで続いた。その後の英国の委任統治下では、ナチスによる迫害が激化した1930年代を中心に欧州からパレスチナへのユダヤ人入植が著しく増える。入植への反対とアラブナショナリズムの高まりは、30年代後半の暴動につながる。国連総会は47年、パレスチナをアラブ国家とユダヤ国家、国連管理下のエルサレムに分割する決議を採択。アラブ側は拒否したが、イスラエルは同決議に基づき48年に独立を宣言し、パレスチナ戦争(第1次中東戦争)が起きる。その間のアラブ難民の数は50万人を上回った。67年の第3次中東戦争(六日戦争)で、イスラエルはエジプト領だったガザ地区とヨルダン統治下のヨルダン川西岸地区などを占領した。それら地域の住人はその当時までにパレスチナ人として知られていた。イスラエルが軍事占領下に置いたことで、彼らのナショナリズムがかき立てられる。ガザ地区はイスラエルとエジプト、地中海に囲まれた飛び地で、難民がその大部分を占めるパレスチナ人約200万人が、過密状態の下で貧しい生活を送る。イスラエルとPLOが調印した1993年のパレスチナ暫定自治宣言(オスロ合意)に基づき、パレスチナ自治政府によるガザ地区の統治が約10年続いた。2005年にはイスラエルがガザの入植地撤去を完了し、翌年の評議会選でハマスがファタハに圧勝。数カ月の抗争を経て、07年にガザを武力制圧したハマスの実効支配に至る。イスラエルはエジプトと共にガザを事実上封鎖した。
なぜ米国はイスラエルを支援するのか
第2次大戦以降、イスラエルが米国から受け取った支援額はミサイル防衛の資金を合わせ約1580億ドル(現在の為替レートで約23兆6000億円)と、他のどの国より多い。48年の建国宣言後、最初の20年間はイスラエルが米国の特に親しい同盟国というわけではなかった。60年代と70年代にソ連がイスラエルと敵対するアラブ諸国を支援する中で、冷戦の打算もありイスラエルに接近した。91年のソ連崩壊までには、米国とイスラエルの関係に新たな支えが生まれる。米国民の支持だ。反ユダヤ主義の後退で積極的に発言するようになったユダヤ系米国人は、議会とホワイトハウスがイスラエルと緊密な関係を維持することを期待している。イスラエル建国がキリスト再臨の予兆だと信じるキリスト教福音派も同じだ。イスラエルの初期段階の左派的方向性やユダヤ人との関係もあって、同国支援はもともと民主党の政治目標だった。しかし、キリスト教福音派が共和党支持に傾いているため、超党派の政策となった。イランのイスラム革命、2001年9月の同時多発テロなど米国を標的とするイスラム主義者の攻撃を受け、米国人はイスラエルに敵対する勢力に理解を示さなくなった。
『エジプト大統領、ハマス攻撃は「40年蓄積された怒り」』(日経)10月16日シシ大統領はイスラム組織ハマスによるイスラエル攻撃について「解決策を見いだす希望を持てなかった40年間に蓄積された怒りと憎悪の結果だ」と述べ、ハマスの行動に理解を示した。シシ氏は過去のイスラエルによるパレスチナ自治区ガザなどへの攻撃を振り返り「自衛権を過度に行使してきた」と非難した。
≪ウクライナ戦争≫
ウクライナ戦争の休戦・停戦の動きがない。トルコ、インドネシア・さらにフランス・ドイツ等の調停役が出ても本来の当事者がテーブルに乗ってこない。ロシア・ウクライナ産の穀物および肥料の世界に及ぼすインフレの原因になっている。欧米の武器供与がさらに追加され・ウクライナへの追加経済援助もあり泥沼化している。戦争の当事者がウクライナから西側諸国となっている。
兵法上、戦争であれば当たり前の戦略であるが西欧諸国は国際法違反として非難している。欧米諸国は、自国民の戦争による犠牲者が出ていないこともあり机上の空論的な『民主主義』・『人権侵害・養護』を標榜、政治的要素により、結果的に自国民にこれまでと異なる生活の窮乏を余儀なくさせている。政治的要因によるインフレの影響で、日本も電気・ガス・水道料金の高騰、各種食料品の値上げとなってしまった。
また、『G7、ウクライナ復興「ロシアが負担」 気候クラブも発足』(12月13日ロイター)の記事は、23年のG7議長国はドイツから日本にバトンが引き継がれる。ショルツ氏の置き土産となった。
1月19日時点で、『米国がロシアの侵攻開始以降に発表したウクライナ向け軍事支援は274億ドル強に達した。』(1月19日ロイター)ようだ。 
以下ウクライナ戦争の影響に関する記事か続く。
『戦争がウクライナを汚染、世界の「食糧庫」深刻な打撃』(3月2日ロイター)『ロシア軍による砲爆撃による被害の実態をあらわにしたが、同時に1年にわたる戦争は、「欧州の大穀倉地帯」と称されるウクライナの肥沃な土壌に目には見えない打撃ももたらしている。』『ウクライナの土壌科学・農業化学研究院の科学者チームがサンプルや衛星画像を調査した結果、これまでにウクライナ全体で少なくとも1050万ヘクタールの農地で土壌の質が悪化したと推定されている。これはなおロシア軍に占領されている地域を含め、ウクライナの全農地の4分の1に達する。』『ロイターが25人前後の土壌分析科学者や農家、穀物企業関係者、その他専門家に取材したところ、汚染物質や地雷の除去、破壊されたインフラの復旧など穀倉地帯が受けたダメージを復旧する作業は数十年単位となり、この先何年も食糧供給がおぼつかなくなる恐れがあるとみられていることが分かった。』『土壌破壊だけでなく、ウクライナの農家は至る所に残された不発弾、かんがい設備やサイロ、港湾施設の破壊という問題にも悩まされている。ウクライナの穀物生産最大手企業の一角を占めるニブロンのアンドリー・バダチュルスキー最高経営責任者(CEO)は、地雷除去だけでも30年かかると見込んでおり、国内農家が事業を続けるためには至急金融支援が必要だと訴えた。』同氏は「今は価格の高さが問題視されているが、食料を手に入れることはできる。だが1年後には、何の解決策も講じられないとすれば、食料不足が起きるだろう」と警告する。』『第一次大戦の激戦地となったフランス・ベルダン近くでは、戦前に穀物の農地や牧草地だった幾つかの場所が砲弾孔や不発弾のため、それから100年以上経過しても農業に使えなくなっている、とフーピー氏ともう1人の学者が08年の論文で指摘している。』『ニブロン幹部はロイターに、外部の支援がほとんど得られないことから、同社はウクライナ南部の地雷を除去する小規模なチームを立ち上げたが、取り組み期間は数十年にわたるとの見通しも示した。「ニブロンにとって極めて深刻な問題になっている」という。』(抜粋・3月2日ロイター)
ウクライナ戦争の余波でウクライナ産の小麦他の輸出に関して、『ハンガリー、ウクライナ産はちみつなど禁輸拡大 EUに支援要請』(4月20日ロイター)とあり、政治的な戦争の影響が国の農業政策に及んでいる。
ウクライナ戦争継続の意義が問われ始めた。一方で、『コラム:ウクライナの戦後復興、ブレイディ債の導入検討を』(1月11日ロイター)のように復興資金の話題が出始めた。
一方、ウクライナに対する格付け機関は、『UPDATE 1-ムーディーズ、ウクライナ格付けをCaに引き下げ』(2月10日ロイター)とした。
≪ウクライナを援助する背景≫
1,北極圏の覇権問題
22年11月16日『焦点:暗転する北極圏 軍事的優位に立つロシア、追うNATO』(22年11月16ロイター)のように、北極圏の地下資源および軍事的な脅威、超高速ミサイル・潜水艦・核兵器搭載可能なロケットシステムの配備態勢と到達距離の短さ等ロシアに対する防衛の意識が高まっている。米国によるNATOの結束および欧米各国の防衛費に関する記事が多くなった背景がここにある。さらに北極圏での中国が参加した共同軍事演習もありその脅威は、ロシア・中国に対する経済制裁および各種の規制強化に結び付く。『焦点:北方拡大するNATOの「ロシア封じ込め」戦略』(7月3日ロイター7月6日配信)
2,ウクライナの兵器産業の位置づけ
さらに、ウクライナが『“プーチンの戦争”の隠された狙い?ウクライナは“兵器先進国”だった。』【報道1930】(22年12月14日TBS)の報道に注目する必要があった。ウクライナが、旧ソ連・ロシア規格の武器製造工場であった事実から、ウクライナを取り込むことで欧米諸国にとって、対立する旧ソ連圏への牽制および武器供与を止める意義がある。中国への牽制ともなる。
そして、中国対応の軍事的対応・先端技術の囲い込み競争が表面化してきた。『終わりなき新冷戦』の始まりといえる。ウクライナは別の見方をすれば、政治的覇権争いの『代理戦争』の意味合いもあるが、軍事兵器製造開発の拠点争奪戦とも考えられる。
『ノルドストリーム爆破背後に親ウクライナ派、米情報示唆=NYT』(3月7日ロイター)の記事が報道されている。『NYTは米政府関係者の話として、ウクライナのゼレンスキー大統領や他のウクライナ政府関係者が攻撃の背後にいたことを示す証拠はなかったと報じている。』が、この記事により、欧米諸国による軍事援助の『大義名分』の意義が薄くなり始めている。
≪ロシア≫
22年9月30日、ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ東・南部のルガンスク、ドネツク、へルソン、ザポロジエ4州の併合を宣言し、4州の親ロシア派代表と併合条約に署名した。これに対して、ウクライナは北大西洋条約機構(NATO)に対し迅速な加盟を可能にする手続きを正式に申請すると表明。米英などが追加制裁を発表したほか、主要7カ国(G7)外相はロシアを非難する共同声明を発表した。停戦休止のきっかけが無くなり、ウクライナ戦争の長期化が決定的となった。一方で、22年時点でウクライナ復興資金が7500億ドル以上と表明しその援助を西欧諸国に要望している。
また、米国・ロシアとも、旧式の軍備品の在庫一掃セールが進み、最新兵器の販売で米国一人勝ちとなっている。『欧州の兵器輸入急増、米の輸出シェア4割に拡大=シンクタンク』(3月13日ロイター)朝鮮戦争・ベトナム戦争・アフガニスタン介入のような米国軍の犠牲者を出すこともなく、石油を含め資源を持つ米国有利の構図となっている。軍需産業全盛期の様相となっている。NATO 諸国も同様である。ウクライナ戦争は、結局ロシア対米国および西欧諸国の対立構造となっており、中東戦争と同様のウクライナ国民を使った『代理戦争』となってしまった。
さらに全人代後の中国の出方を待っていが以下の記事のように軍事面は別として欧米諸国との対立を共同で進める表明がなされた。
『中ロ首脳会談、プーチン氏「春の公式訪問期待」 軍事協力も深化』(22年12月30日ロイター)『中ロ首脳会談、軍事協力にプーチン氏言及 習氏は和平へ客観姿勢』(22年12月30日ロイター)習国家主席は2分程度で応じ、「困難な」世界情勢を踏まえ、中国はロシアとの戦略的協力を拡大する用意があると語った。ウクライナ和平交渉への道のりは平坦ではないとし、中国は「客観かつ公正な姿勢」を維持すると述べた。その上で、両国は国際問題で緊密に調整・協力すべきとし、ロシアがウクライナを巡る交渉に関わる意思を強調したと指摘。イデオロギー的に西側と対立する点ではロシアとの親和性を示し、「制裁と干渉は失敗する運命にある」とプーチン大統領に語った。その上で、「覇権やパワーポリティクスに反対するロシアや世界の先進勢力と中国は協力し、両国の主権、安全保障、発展と国際正義を断固として守る用意がある」と述べた。
22年12月30日の記事の意味は大きく、欧米対中ロの対立構造が明確となり軍事面の表明はなかったが、ウクライナに欧米が協力するのであれば、中国が協力するのは当然の結論となる。ロシアの通信設備・兵力・ロケット等の武器の枯渇が報道されているが、中国・北朝鮮・イラン等の何らかの援助が現実のものとなればその予想は逆転することになる。『代理戦争(ウクライナ)』の長期化・泥沼化は避けられない。また、22年12月30日を境に、世界の政治経済の大きな変動(転換)を示している可能性がある。
制裁関連で、欧米によるロシア経済制裁の行方は、『インド、ロシアとのルピー建て貿易に改めて期待感=商工省高官』(1月16日ロイター)ロシア・インドとの関係記事を注目したい。『バルト3国、昨年のロシア産LPG輸入が大幅拡大=トレーダー』(1月26日ロイター)のようにあまり効果がないように思える。
≪対台湾≫
台湾問題で、バイデン大統領政権は、武器販売を進めながらも、『1つの中国』を表明している。2枚舌外交である。一方で口先介入を進め中国と対立、台湾の半導体技術の取り合いとなっている。米中の軍事的直接衝突を避ける目的もあり、台湾企業の米国・日本を含めた同盟国への技術移転を待つ時間稼ぎのようである。IT /AI を含めた主導権争いとなっている。日米首脳会談で日本の軍事的強化を表明された意味が理解できる。
≪米国の対外戦略~EV・半導体≫
米国のEV・半導体政策に関して自国第一主義の影響で、『VWや日産など6社のEV、18日から米税額控除対象外に』(4月17日ロイター)『EU、欧州半導体法を承認 域内産業育成で米・アジアに対抗』(4月18日ロイター)となった。
≪対中戦略≫
これまで、関税を基軸とした規制を進めてきたが、ウクライナ戦争を機にロシアの中国への急接近が見られ半導体問題を根拠とした対中戦略が進められている。最先端技術による武器開発阻止の意味があるのだろう。
『中国、重要な技術分野で欧米を「圧倒的にリード」=調査』(3月2日ロイター)『シンクタンクのオーストラリア戦略政策研究所(ASPI)は、防衛や宇宙、バイオテクノロジーなどの重要な新興技術44分野中37分野で中国が欧米諸国を「圧倒的にリード」していると指摘した。ASPIによると、複数分野において世界のトップ10の研究機関全てが中国に拠点を置いているという。米国は、高性能計算や量子コンピューター、小型衛星、ワクチンなどの研究で世界をリードしているが、他の多くの分野では2位となっている。ASPIは、中国が政府プログラム下で「影響が大きい分野での研究で圧倒的なリード」を確立していると指摘。欧米諸国は安全なサプライチェーン(供給網)の確保に向け協力し、戦略的技術の迅速な発展を目指すべきと提言している。
半導体そのものだけでなく製造装置や設計ソフト、人材も含めて規制する。特定の企業でなく中国全体に網をかけた。中国商務省は22年12月12日夜の公表文で「典型的な貿易保護主義のやり方」だと批判した。『中国、米国をWTO提訴 半導体輸出規制巡り=環球時報』(22年12月13日ロイター)中国は世界貿易機関(WTO)に米国の先端半導体などを巡る対中輸出規制が不当だと提訴したばかりで、半導体関連の米中対立が激しさを増している。 
半導体製造会社、日本・オランダの企業に対する要求があり、『米の対中半導体規制、同盟国が厳しい措置講じない恐れ=業界団体』(2月1日ロイター)米中対立の記事が見られた。
『米、日英と重要鉱物巡る貿易協定模索 中国の影響力抑制へ=報道』(2月10日ロイター)米政権が日本および英国と重要な鉱物資源に的を絞った貿易協定の締結を模索していると中国の影響力抑制を狙う動きとみられる。『米中ハイテク戦争、劣勢の米国 スティーブン・ローチ氏』米エール大学シニアフェロー(8日日経)『バイデン政権、米企業による中国技術への投資抑制導入か=NYT』(2月9日ロイター)『米政府、中国の軍事航空宇宙プログラムに関係する6社に制裁』(2月11日6:44 JSTブルームバーグ)軍事活動の中でも特に飛行船や気球など航空宇宙関連プログラムに関連している企業が対象。の報道が続く。『米、中国拠点5社などに制裁 ロシア軍使用のイラン無人機巡り』(3月9日ロイター)米中の直接対決は避けているようだ。『米中関係は負のスパイラル、相次ぐ非難の応酬で衝突懸念高まる』(3月10日ブルームバーグ)の観測記事が出ている。
 中国軍事面で、『中国の新空母「福建」、間もなく初の航行試験実施か 副艦長』(23年1月4日CNN)「福建は中国がこれまで建造した軍艦の中で最大級。同艦を作戦に編入できるかどうかは中国海軍の方針にとって重要な要素となる。22年6月17日に進水式を行い、現在は上海にある造船所で建造の最終段階に入っている。」中国の軍備拡張が進んでいる。
『バイデン米大統領、対中投資抑制策をG7首脳会議前に公表へ-関係者』(4月20日ブルームバーグ)を前にして、米財務長官、「適切な時期」に訪中の意向 米中関係は「緊張」』(4月20日ロイター)『米政権の対中政策は安全保障が中核、経済的コスト受け入れ-財務長官』(4月20日ブルームバーグ)「国家安全保障は米中関係で決定的に重要だ」と明言。「こうした懸念が米国の経済的利益に反するとしても、われわれが妥協することはない」と述べる。中国がいずれ米国に代わる世界一の経済大国となり、米中両国の衝突につながるとの見方もある中で、イエレン長官は「数十年も前から米国の衰退という主張はなされているが、常に間違っていた」と指摘し、「新たな挑戦に直面する中で、米国は適応し改革する能力を繰り返し示してきた。今回も同じだ」と主張する。『バイデン政権の対中政策、経済より安全保障を重視-財務長官』(4月20日ブルームバーグ)米中関係が悪化する中で、イエレン長官は今回、バイデン政権の対中政策における3項目の優先課題について概要を説明した。国家安全保障を守り中国の動向に対する懸念を表明するとともに、健全かつ公平な経済上の競争を目指し、かつ気候変動や途上国の債務再編といった問題での関与を進めるという3点だ。
≪インフレ対策と利上げ・通貨政策≫
ECB・英国・米国等の欧米諸国の中央銀行の追加利上げ実施があり、さらなる追加利上げに対する発言が報道されている。一方、インフレ対策としての利上げによる実体経済の影響が指数に表れ始め、各国国民の生活が脅かされている。企業への影響はこれからで、収益確保の価格転嫁による値上げが続いている。  
サプライチェーンの亀裂、コロナ対応・ウクライナ戦争を起因とするエネルギー・食料品等の生活基盤のインフレは放置されたままで収まりそうにない。譬えウクライナ戦争が休戦・停戦となっても、エネルギー・食料問題がすぐに解消することは考えられず、インフレおよび食糧危機は長期化する。米国・欧州の世界のリーダーシップを発揮するという意味合いがピント外れとなっている。
インフレに対しての対応に不満が広がっている。政治的な対ロ制裁・対中制裁(サプライチェーン等)の影響がその原因であることは理解しても現実の生活は別であると考える市民の反乱であろう。
『チェコ首都で数千人が反政府デモ、物価・エネ問題巡り退陣要求』(4月16日ロイター)『カナダで公務員15.5万人がスト、税務や穀物輸出業務に影響へ』(4月19日ロイター)『ドイツ全土で21日に鉄道スト、朝の通勤時間帯に大きな影響』(4月19日ロイター)
インフレ対策として利上げしかないとの幻想が見られる。中央銀行の物価対応という使命・役割はそこにある。しかし、金利にのみ頼ることで、経済に悪影響を及ぼすことは周知の事実である。日本ではバブル退治として利上げを決行、バブル崩壊後、銀行(北海道拓殖銀行・長期信用銀行等)・証券(山一証券)の倒産と再編成並びに数十年に及ぶデフレ発生の経験がある。通常利上げによる影響が表れるにはタイムラグがあり、今後3~6か月以上の結果を見なければわからない。さらに利上げという特効薬は即効性がない。この点が財政と異なっている。大型倒産がないことの安心感が広がっており、現状賃金上昇と価格転嫁による収益確保がかろうじて機能している。その恩恵で欧米各国の失業率が低い。金融・財政担当者は、経済が失速して不況にならない程度(多少の企業倒産・失業者の増加はやむなしの発言が散見される。)の利上げ水準とスピードを探っている状況と思われる。欧米各国の国家財政の担当者は原資の制約があり、プライマリーバランスの呪縛(欧米式財政論)があり、財政・貿易等のバランス上、財政投資という手法が容易に使えず、すべての対応が遅れている。不況という現実に接していないこともある。
また、時の政権で選出された中央銀行の責任者は、政治に口出しできない現実がある。独立性が担保されているとはいっても、議会における説明責任であって形式的なものとなっている。トランプ政権以降、米中・米ロの政治的な対立と経済制裁に頼ったがため、物価上昇を引き起こし、その根本問題の解消に対する発言もなく、インフレの問題と景気悪化をさらに拡大させている。これらの問題を修正するには、政府および金融担当者の判断を待つのではなく、各国国民の貧富格差・生活苦による反発が必要なのかもしれない。現実に、欧米で賃上げ要求のストライキが始まっている。
今回の物価上昇は、モノ不足から生じたのではなく、あらゆる商品の原材料半導体等の高騰が原因である。これまで、欧米を基準(世界秩序として?)としたエネルギー関連・半導体・衣料・食料等のサプライチェーンとして組み込んだ対象国(中国・ロシア・イラン等)への経済制裁・規制から始まったものである。政治的な要素が大きい。
今後、シンギュラーポイントを超え、高価格商品の供給品(在庫)があふれ、需要サイドの消費の落ち込みから企業倒産・失業者増となり、連鎖的なスタグフレーションとなる可能性が高い。あらゆるインフレの原因が解消されず、長期化が予想される。企業倒産・失業問題が現実味を帯びるのはこれからだ。日本では中小企業の倒産が報道されている。
ここにきて、3月10日、米金融持ち株会社SVBファイナンシャル・グループ傘下のシリコンバレー銀行の破綻があった。利上げによる脆弱性が原因とされているが、その影響が懸念される。欧米金融株の下落が見られた。
≪為替介入と利上げ効果としての通貨高政策≫
為替操作目的の利上げ発言が散見される。米国一人勝ちによるドル高の影響で日本・欧州・英国・新興国では、通貨安となっている。インフレ対策として利上げが報じられており、米国との利上げ競争となってきた。通貨安の防衛策の意味合いが強い。通貨防衛はインフレ圧力削減に必要であるが、米国による為替操作国に指名されることを避けている。22年9月以降何度か為替介入を行ったようだが機能せず円安が進んだ。22年10月21日、政府・日銀が円買い・ドル売りの為替介入に踏み切った。151円台から145円台に押し下げたが147円台で取引は終了。現在、130円台となっている。エコノミストは外貨準備高を材料にその効果を否定的に評価していた。
しかし過去の為替介入水準での介入は最終的に成功しており、その後為替利益を出している。しかし、目先の問題として、通貨安はインフレの原因となり、最終的に国民が犠牲者となる。各国政府の国民に対する対応が問われている。新たな産業創出でない限り、国民の税金の負担を増やすことになる。米国を除く日本・欧州・英国・中国の通貨安の影響が出ており、インフレ対策の一つとして協調介入の可能性が高まりつつある。中国は通貨防衛を始めたようだ。一方、欧州英国は利上げを材料としているが、経済の悪化が現実のものとなり始め、インフレ対策とした利上げによる通貨防衛に限界が見えている。ポンド・ユーロ安が続いている。米国の22年中に4度の0.75%利上げがあり、その幅およびスピードが早急となっている。発展途上国に対するドル建て債務への配慮もない。資金を米国に集める基本政策の限界が始まっている。さらに、世界中の金余りにより発生した仮想通貨という、中央銀行の政策誘導機能の影響が及ばない通貨決済機能のある金融商品が流通している。
≪イデオロギー≫
政治問題として、大義名分の『民主主義対権威主義』の議論が活発となっている。いつの間にか歴史背景(政治史・哲学・宗教)を基本とした『自由・平等・博愛』の国家・国民として相互不干渉・権利・義務・および制約の基本理念を忘れ、『人権侵害』を標榜する『民主主義』を唱え、国民目線・生活を無視・犠牲とした政治・国家体制の『イデオロギー』の対立となってしまった。一方、背景となる欧米諸国を基準とした『資本主義』の問題点・欠陥が露見している。基本的に『共産主義』対『資本主義』の『イデオロギー』の対立で始まったことであり、共産主義国であったソ連は崩壊、その後ペレストロイカと称して資本主義の導入でプーチン政権となった。中国は共産党を主軸としながらも鄧小平以降資本主義の導入で今に至っている。選挙を通じて議会が成り立っており、すべて『民主主義の一形態』にすぎない。この歴史的な背景を忘れ民主主義という言葉の遊びとなっている。『表現の自由』があるか制限されるかの違いにすぎない。法哲学的には『自由という権利』の裏返しの『他人に迷惑をかけてはいけないという義務』がある。何をやってもいいということはありえず、これを制限するための『法律』がある。その上で政治は、一般国民の生活が裕福かどうかの判断で決まる。『自由を脅かすのは弾か票か 米欧、民主主義にもろさ』(22年12月29日日経)の記事が出た。2月7日バイデン米大統領の一般教書演説で、米国の民主主義は南北戦争以来最大の脅威に直面しているとした上で「われわれの民主主義は傷ついたものの、屈しておらず、壊れていない」と強調した。これに対し、共和党は『米共和、バイデン氏の結束呼びかけに拒否反応 一般教書演説巡り』(2月7日ロイター)「バイデン政権は米国民が毎日直面する厳しい現実よりも、『woke(意識高い系)』の幻想に関心があるようだ」と非難した。また、『バイデン氏「対中競争勝利へ結束を」一般教書演説』(2月8日日経)これに対して『中国式現代化は西洋化にあらず、共産党の指導堅持が中核と習総書記』(2月8日ブルームバーグ)「習氏は党中央政治局常務委員や中央委員、地方政府首脳、閣僚らに向けた演説で、国家の発展全体ではイノベーションを重視すべきで、社会の公平性をより効果的に維持しながら、資本主義よりも高度な効率性を達成する必要があると語った。資本主義よりも効率的で社会正義をより適切に守る現代化の道を生み出すよう中国は取り組まなければならないと述べた。」「民主主義」とは表現せず、「資本主義」に対立する「社会主義(共産主義)」の表現を使っている。あくまでも国民を主体とした社会主義としている。
≪北朝鮮≫
バイデン政権が見過ごしてきた極東地区の北朝鮮の核兵器を含めロケット・ミサイル発射が22年9月25日以降活発となり、ミサイル技術の高度化が確認され、既存の防衛能力(レーダー・衛星による追視監視体制・迎撃態勢)での対応に疑問符がついている。22年11月18日米国本土を射程に攻撃できるICBM(大陸間弾道弾)の実験に成功した模様、地政学上の円安材料となっている。
≪制裁と多極構造≫
現状、北極圏の政治的優位性もあり、資源大国ロシアの反乱(オイルショックに類似)が起きており、国際規律の再構築への挑戦が始まっているとみることができる。米国主導による政治・経済体制は、米国および先進国(G7)対中国・ロシア諸国の対立構造となり、2極構造となりつつある。インド・中東諸国・パラオ島の南西諸島は中立の立場をとっている。西側諸国(欧米先進国)軍事力並びにサプライチェーンの世界覇権問題に絡めて、現体制の維持を目的に、『防衛』と称してこれを防ぐための経済制裁の嵐(応酬)が吹いている。バランスある落としどころを考慮して、サミュエルソンが提唱した政治と経済を複合的に考える議論が必要である。 
≪米国≫
22年11月8日、米国は上院・下院の中間選挙を迎えた。民主党の下院は過半数割れとなり、今後の政権運用が難しくなった。さらに2021年以降、ドル高を標榜した結果、インフレ問題と歩調を合わせるように発展途上国の債務問題が懸念され始めている。22年11月16日、インドネシアバリ島でのG20 で議題に上ったものの深く審議されなかった。欧米中心の枠組みを壊すまでには至らなかった。トランプ政権時の政策をさらに推し進めた、自国第一主義を推し進めた結果のようだ。軍事面・経済面で圧倒的優位さが無くなったことが確認され、ドルインデックスの修正が入り始めた。IMM 通貨先物でドルが売り越しに転じたとの報道(22年11月19日ロイター)もある。また、『ドルの兵器化、米国に裏目に出る恐れ-各国で覇権脱却の動き』(22年12月23日ブルーンバーグ)の観測記事があった。基軸通貨としてのドルの優位性が薄れているようだ。ドル安要因となる。
米国の場合、最近の現象は過去と違い、賃金アップが伴ったコストアップ・インフレとなっているが、食料品・家屋等の消費財の価格が、中間層以下の一般大衆の手の届く水準を超えている。収入の少ない大衆は、食費の切りつめ、医療費の削減等の対応をしているとの報道がある。結果的に、貧富の格差が広がっている。
また、米国の経済問題となる企業倒産・失業者が表面上出ていないことが幸いしている。しかし、米国内では銃刀法規制が進まず治安問題が報道されており、人種差別・宗教問題・人工妊娠中絶問題・南米諸国からの移民問題等、根本的な米国内の分断状況に変わりはない。英国からの独立戦争・南北戦争(英国・仏の軍事介入)等、植民地時代を経て、アメリカンドリームを求めて世界中から集まった移民で成り立った国であることもあり、第二次世界大戦時のように一つのアイデンティ(USA)でまとまることができるかが試されている。さらにほぼ200年で築き上げた英国・米国を基準とした株式資本主義のあり方が問われている。
『米国、追加支援で防衛産業との17.5億ドル規模の契約』(2月3日ロイター)米国防総省のライダー報道官が記者団に語ったところによれば、新たな21億ドル規模のパッケージには米国が在庫に保有する兵器を4億2500万ドル相当、防衛産業との契約により提供される兵器が17億5000万ドル規模に上り、高機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」の弾薬なども含まれる。米国防衛産業の保護の動きか。また、関連企業の需要底上げの意味がある。
『バイデン氏「対中競争勝利へ結束を」 一般教書演説』(2月8日日経)これに対して『中国式現代化は西洋化にあらず、共産党の指導堅持が中核と習総書記』(2月8日ブルームバーグ)「習氏は党中央政治局常務委員や中央委員、地方政府首脳、閣僚らに向けた演説で、国家の発展全体ではイノベーションを重視すべきで、社会の公平性をより効果的に維持しながら、資本主義よりも高度な効率性を達成する必要があると語った。資本主義よりも効率的で社会正義をより適切に守る現代化の道を生み出すよう中国は取り組まなければならないと述べた。」
国内経済の認識について、『米経済、今年と来年の景気後退はない=バイデン大統領』(2月8日ロイター)、「エコノミストは米連邦準備理事会(FRB)がインフレ抑制に向けた利上げを進める中、景気後退の可能性を警告している。」しかし、『米国人の半数、1年前より経済的に苦しいと回答-09年以来の高い割合』(2月9日ブルームバーグ)『年10万ドルの給料、NYで最も大きく目減り-税金と生活費の高さ響く』(3月17日ブルームバーグ)の現実がある。一方『「親より貧しい生活」、米若者の人生観-ローンとインフレの二重苦』(6月1日ブルームバーグ)『年間所得が5万ドル(約700万円)を下回る回答者のうち、60%は「自分の親より金銭的に恵まれないだろう」と考えている。年間所得が10万ドルを超える回答者の場合、この割合は34%にとどまる。』
一般国民との認識のずれが見られる。
≪その他≫
地球・人類生存に関わる、気候変動による自然災害及び地震災害の報道が続く。COP27では答えが出せなかった。食糧危機はこれからである。米国・中国・ロシア等の『覇権』問題に関連して世界のリーダーシップの中身が問われている。そのあおりは、エネルギー・食料等のインフレ問題となり、食糧危機として世界各国の国民〈80億人〉に及んでいる。『ウクライナ穀物収穫は今年も減少へ、4950万トンの予想=高官』(2月1日ロイター)食料に関するインフレ問題が深刻化している。
必要なのは、政治体制の如何にかかわらず世界のバランス感覚である。国民目線の政治ではなくなっている。為替・株式・債券・各種商品を含め金融市場・金融制度・国際会計基準・金融財政理論の行方に関連する。

≪統括≫

世界経済は、各国中央銀行の金融緩和・政府の補助金等の政策で企業倒産を食い止め、完全失業者をそれほど出さず、自殺者の急増を防いできた。その中で、コロナによる犠牲者(死亡者)を乗り越え、製造業中心に経済活動が回復してきた。
アメリカの対中国戦略により中国・アジア地区中心のサプライチェーンに亀裂が生じ、物流の根本が揺らいでいる。コロナ対策が起因で生じたインフレ対策処理が終わらない状況で、2022年2月ロシアによるウクライナ侵攻が始まった。さらに、22年11月16日、欧米諸国がロシアの脅威に共鳴しウクライナを援助する背景が何であるかが報道されている。
『焦点:暗転する北極圏 軍事的優位に立つロシア、追うNATO』(11月16ロイター)
『ロシアにとっては、ヤマル半島の液化天然ガスプラントも含め、北極圏地域には膨大な石油・天然ガス資源が眠っている。ロシアの北方を拠点とする船舶が大西洋に到達するには、「GIUKギャップ」と呼ばれるグリーンランド、アイスランド、英国のあいだの水域を抜けるしかない。ロシアのミサイルや爆撃機が北米に到達する最短の空路は、北極点の上を通過する。NATO加盟国にとって、北大西洋をまたぐ連携を保つ上でGIUKギャップは非常に重要だ。また、油田・ガス田も存在する。ノルウェーは今や欧州最大のガス輸出国だ。スウェーデンとフィンランドが加盟すれば、北極圏諸国8カ国のうち7カ国がNATO加盟国ということになる。米バージニア州ノーフォークに本拠を置くNATO統合軍司令部の司令官を務めたアンドリュー・ルイス氏は、ロイターの取材に対し、現在では軍民双方の利用者をつなぐ通信ケーブル及び全地球測位システム(GPS)を含む衛星システムもリスクにさらされている、と語った。』(ロイター)
北極圏の地下資源および軍事的な脅威、超高速ミサイル・潜水艦・核兵器搭載可能な等の配備態勢と到達距離の短さ等ロシアに対する防衛の意識が高まっている。欧米各国の防衛費に関する記事が多くなった背景がここにある。さらに北極圏での中国が参加した共同軍事演習もありその脅威は、ロシア・中国に対する経済制裁および各種の規制強化に結び付く。
さらに、ウクライナが
『“プーチンの戦争”の隠された狙い?ウクライナは“兵器先進国”だった。【報道1930】』(12月14日TBS)の報道に注目する必要がある。
『ウクルオボロンプロムという企業が「航続距離1000km、弾頭重量75㎏のドローンの開発を完了しつつある」』
ウクルオボロンプロムとは、ウクライナの国有軍事企業グループ。「もともとあった軍事企業グループを国家戦略的に2010年に統合。それまで国有企業や民間企業がバラバラにやっていて赤字だった。それを集約して国家目標を立てて企業体として黒字転換を目指した。137社で構成され従業員は約6万7000人、売上高は国家機密だが約1400億円(2020年)とみられる。
ウクルオボロンプロムを構成する137の企業それぞれに得意分野があり、製造拠点はウクライナ各地に点在している。例えば造船はミコライウ。船舶の設計・開発はヘルソン。ザポリージャではジェットエンジン。ハルキウ周辺にはミサイル、防空システム、戦車、装甲車、航空機の製造拠点が集中している。そして、キーウにはウクルオポロンプロムの本社があり、航空機の設計をする会社もある。契約先はアメリカの航空会社、カナダの電子機器企業など世界各国に及び、半導体はアメリカや韓国から、精密機械は日本、ドイツから輸入している。ウクルオポロンプロムは兵器なら何でも作れる大企業だ。思えば撃沈されたロシアの軍艦「モスクワ」も、中国初の空母「遼寧」も作ったのはウクライナだ。航空機、戦艦、ジェットエンジン、ロケットエンジン全部を作っています。(中略)工場の中を見たんですけど精密機械は殆ど、ドイツと日本のものでした。輸出先としては中国これが一番大きい。それからインド、タイにも戦車を入れていますし、ミャンマーも艦船の輸入をしている。
「何故この軍事産業の拠点ばかりロシアは欲しがるかというと、かつてはソ連という一つの国の中でいろいろな産業を分業化していた。それが15の共和国が独立してしまって、ロシアからすると本来自分たちの国の中で持っていた軍事産業が持って行かれちゃったっていう感じ。だからそれを取り戻すというのが今回の軍事作戦の隠された狙いの一つだと思います」
実はソ連時代、航空機やロケットなどの生産において設計はロシアが担当したが、例えばロケットの製造はカザフスタン。潜水艦の部品の製造はモルドバ、航空機の部品はアゼルバイジャンなど共和国が分担していた。その中にあってジェットエンジン、戦艦など兵器の殆どを製造していたのがウクライナだったのだ。“自国の兵器製造部門”を取り戻すことが、プーチン氏の今回のウクライナ侵攻の目的の一つだとしたら、逆にそれがロシア産兵器の弱さを世界に見せつけることになったのは皮肉な結果である。』(BS-TBS 『報道1930』 12月12日放送より)
ウクライナが、旧ソ連・ロシア規格の武器製造工場であった事実から、ウクライナを取り込むことで欧米諸国にとって、対立する旧ソ連圏への牽制および武器供与を止める意義がある。中国への牽制ともなる。
『終わりなき新冷戦』の始まりといえる。ウクライナは別の見方をすれば、政治的覇権争いの『代理戦争』の意味合いもあるが、軍事兵器製造開発の拠点争奪戦とも考えられる。そのあおりは、インフレとして世界各国の国民に及んでいる。欧米各国さらに発展途上国の国民の生活を無視した政策が行われている。
ウクライナ侵攻の対応策としてロシアへの金融を含めた経済制裁がはじまった。『民主主義・人権擁護』を大義名分として、EC・NATOを巻き込む形でウクライナへの武器供与を進め戦争の長期化が現実のものとなった。米国政権は、アフガニスタン撤退による失策非難を避ける意図もあり、ウクライナ戦争介入に際して、米国・NATO 連合は、同盟国ではないとして、直接関与は避けている。
しかし、22年11月16日初めてNATO加盟国ポーランドで2人の犠牲者が出た。ウクライナ戦争NATO参戦かと、一時騒然となったが、ウクライナ側との報道もあり原因究明が先決として冷静に対応している。さらに『ウクライナ軍、ロシア・クルスク州の発電所を攻撃=地元知事』(22年11月30日ロイター)の報道があったが無視されている。ただし、ウクライナの能力以上に躍らせたため、その終息ないし宥めるのは困難であろう。イラクのフセイン大統領を思い出させる。ついに、『ウクライナ軍、ロシア・クルスク州の発電所を攻撃=地元知事』(22年11月30日ロイター)の報道があったが無視された。さらに、このような状況下、22年12月5日、『ロシア空軍2基地にドローン攻撃、ウクライナもロ軍再攻撃で各地に被害』(22年12月6日ロイター)、『ウクライナ、ロシアをまた無人機攻撃 石油タンクで火災』(ロイター)とロシア本土への攻撃が報じられている。その報復として、ロシアのウクライナへの電気・水のインフラ攻撃が激化している。
北極圏のロシアの脅威に始まる欧米のウクライナに対する武器供与を中心とする援助ではあったが、結果として資源関連のインフレを招き、さらに食糧危機にまで及んでいる。さらに、中国・ロシアを接近させることになり、米国対ロシア・中国の対立構造となってしまった。米国の覇権に対する挑戦そしてその対応としての意味合いが強い。さらに、『サウジと中国、戦略協定に署名 習主席「アラブとの新時代」到来』(22年12月8日ロイター)『中国アラブ関係「新局面」、元建て取引推進で米揺さぶり 習氏)(22年12月9日ロイター)『米欧の世界支配への欲望、紛争リスク高める=プーチン氏』(22年12月9日ロイター)とあるように、基軸通貨・中東諸国への米国の影響力低下等ドル安材料となっている。『インド、ロシアとのルピー建て貿易に改めて期待感=商工省高官』(1月16日ロイター)の記事は基軸通貨のドル安要因となった。
全人代後の中国の出方を待っていが以下の記事のように軍事面は別として欧米諸国との対立を共同で進める表明がなされた。
『中ロ首脳会談、プーチン氏「春の公式訪問期待」 軍事協力も深化』(22年12月30日ロイター)『中ロ首脳会談、軍事協力にプーチン氏言及 習氏は和平へ客観姿勢』(12月30日ロイター)習国家主席は2分程度で応じ、「困難な」世界情勢を踏まえ、中国はロシアとの戦略的協力を拡大する用意があると語った。ウクライナ和平交渉への道のりは平坦ではないとし、中国は「客観かつ公正な姿勢」を維持すると述べた。その上で、両国は国際問題で緊密に調整・協力すべきとし、ロシアがウクライナを巡る交渉に関わる意思を強調したと指摘。イデオロギー的に西側と対立する点ではロシアとの親和性を示し、「制裁と干渉は失敗する運命にある」とプーチン大統領に語った。その上で、「覇権やパワーポリティクスに反対するロシアや世界の先進勢力と中国は協力し、両国の主権、安全保障、発展と国際正義を断固として守る用意がある」と述べた。
この記事の意味は大きく、欧米対中ロの対立構造が明確となり軍事面の表明はなかったが、ウクライナに欧米が協力するのであれば、中国が協力するのは当然の結論となる。ロシアの通信設備・兵力・ロケット等の武器の枯渇が報道されているが、中国・北朝鮮・イラン等の何らかの援助が現実のものとなればその予想は逆転することになる。『代理戦争(ウクライナ)』の長期化・泥沼化は避けられない。
これまで、経済の問題と政治的な軍事問題を切り離して考えればよかったがそうはいかないのが現実である。第二次大戦後の政治・経済の国際ルールに亀裂が生じている。政治学でいう、核・軍事の『バランス・オブ・パワー』で云う米ソの2極構造が壊れ、ソ連崩壊後、米国一極の構造との幻想があった。今では経済力をつけた中国・インド・中東諸国を含める多極構造の世界となっている。
米国に集中するコンテナの問題はやや終息しつつあるが、燃料費高騰で海運賃は高止まりのまま。さらに人件費も高止まりしている。当初、ロシアに対する金融制裁を基軸に、エネルギー資源(石炭・石油・天然ガス)・食料資源・鉄鋼資源に限定した貿易制裁を起草、ロシア経済の疲弊による政権維持が困難になるとの構想・戦略で進めてきた。
しかし、ロシアが世界に供給する資源がエネルギー資源・食料・半導体生産資源・肥料・希少金属等多義に渡っていることが後になって理解された。そもそも、中国を含め世界の物資のサプライチェーンの枠組みは先進国の欧米中心に組み立てられてきたものであった。中国への関税政策、ロシアへの制裁開始以降エネルギー以外に各種商品価格の高騰を呼びインフレが世界に広がってしまった。さらに食糧危機問題が発生し、最貧国の政治状況に変化がみられる。また経済救済の枠組みも再考を余儀なくされているが進展はない。コロナ対策・インフレ対策で財政的な余力は限られている。他国の面倒を見る余裕はなくなっている。
各国の金利引き上げ競争が始まり、国内の経済維持に警鐘がなり始めており、世界経済のスタグフレーションの状況となりつつある。
世界世論はロシアへの非難に終始している。ロシア・ウクライナとの休戦・停戦交渉は暗礁に乗り上げている。ウクライナのゼレンスキー大統領は、民主主義の基礎となる自国民の安全・安心を確保するという本筋(米国南北戦争後のリンカーン)を忘れて、為政者としてはやってはいけない、自国民の犠牲者が増えていることを無視する形で、西側諸国のマスコミへのお涙頂戴なのか情報提供としてSNS等の手段を駆使、さらに休戦に向けた努力もなく、欧米各国政府への武器供与を呼び掛けているのが現状である。ウクライナをどうしても勝たせたい理由が米国の覇権維持にあるようだ。
さらに、戦争拡大を煽るように、22年4月12日以降、バイデン米政権はウクライナへの約7億5000万ドル(約940億円)を始めとして追加支援を繰り返し、相当の軍事支援を進め、武器や装備品を供与している。1月19日時点で、『米国がロシアの侵攻開始以降に発表したウクライナ向け軍事支援は274億ドル強に達した。』(ロイター)ようだ。ウクライナへの支援をさらに強化する姿勢を強調している。
しかし、中間選挙で下院の過半数を共和党に握られ、これまでの政策が維持できるか注意が必要だ。イラン・イラク戦争時、米国がイラクへの大量の武器援助を行ったことに酷似している。その後イラクでは残された武器を利用したフセイン政権が樹立され中東戦争へとつながる。ウクライナの現状に酷似している。欧米諸国が最新兵器であっても、人殺しの道具を供与していることに変わりはない。
さらに、NATOとの結束を進め、G7を巻き込むことで世界のリーダーシップを強調している。しかし、戦後処理に係る費用(7500憶ドル)はどこから調達するかは不明である。ウクライナにその能力はない。戦後処理費用をロシアに押し付けようとしている。
戦争当事者のウクライナ指導者の先導的なパフォーマンスに迎合し、他人事のように、本当の犠牲者であるウクライナ国民の安全・安心の議論はない。今回、ロシアによる首都圏攻撃でインフラである、水道電気の施設が機能不全となったようだ。冬を迎え国民の生活に苦悩を強いることになる。さらに主要の穀倉地帯がロケット・ドローンによる攻撃によるその破片処理が必要で今後の穀物生産に支障が出る可能性がある。戦後処理に10年かかるとの報道が現実のものとなっている。穀物ができなければウクライナの主要収入がなくなる。さらにこの影響で食糧危機・および半導体生産の原料にも問題が生じ、小麦の依存度の高い東南アジア他の地域で起きる可能性が高くなる。
一般国民は、健康で安心・安全で生活できれば良く、映画・音楽・演劇・文化に触れあう環境を望んでいる。そもそも、現ウクライナ大統領が、戦争前にウクライナの65歳以下の男子の国外脱出を禁止、その家族が国内に残る仕組みを作った事実を忘れている。さらに、首都キーフ周辺に日本も含めた欧米の大使館を存続させている。ある意味での戦略的盾となっている。ロシアが本格的に首都攻撃できない理由がそこにある。大義名分は何であれ、一般国民は戦争(殺し合い)は望んでいない。報道のようなアイデンティティの問題ではない。食料・仕事・教育を含め衣食住の環境を整えるのが『為政者』の基本的な仕事なのだが・・・。専門評論家の言う政治体制は関係ない。儒教(陽明学)に基づく『帝王学』を含め孔子の『中庸』の精神で国民目線からの積み上げのバランスある『政治学』が必要である。中国の『三国志』時代の対応が必要である。インドにみられる東洋哲学的な行動が参考となる。
各国でインフレが高進しているが、各種の商品値上げで困窮(迷惑)するのはそれぞれの自国民であることを忘れている。政治の基本は国民であって、世界秩序ではない。同じことがコロナ対応でもいえる。
ウクライナの戦後復興費用および負担がどうなるか、G7等の先進国の負担となるようであるが、その原資が各国民の税金であることに変わりはない。さらに、中国・ロシアを排除した米国主導のサプライチェーンの再構築に5年で官民合わせて6000億ドルと報じられている。しかし、発展途上国を巻き込むことができるか疑問符がついている。
エネルギー供給についても備蓄原油放出で何とか凌ぐつもりでも、第二次オイルショック以降の備蓄戦略であったことが忘れられている。その補充するにはOPEC等の石油産出国の協力が必要であるが、補充コストは1バレル100ドルを超えることが予想(一説では130ドル)されており、今後に対する筋書きもない。しかし、ロシア崩壊を狙って、ロシアの豊富な資源の獲得を米国・西欧諸国が画策しているのであれば別である。オイルショック以降、冷戦状況下、イスラエルを使って米ソ対立を煽り、代理戦争と化した中東戦争を起こしオイルマネーの消費・欧米に資金を集め循環する仕組みを作ったように・・・。
いずれにせよ、ウクライナ戦争が終結しても、インフレの長期化からは逃れられない。これまで、欧米諸国の企業は、コストについては価格転嫁することでごまかしができたが、各国国民の所得が順調に増えるとは考えられない。
さらに利上げをきっかけに、スリランカのような発展途上国の借り入れ問題から食糧危機・メキシコ危機・アジア危機の再来が予想される。IMFの対応は数か月先のようだ。事実、国際通貨基金(IMF)アジア太平洋局長代理のアンマリー・グルデウルフ氏は、債務危機に陥っているスリランカについて、金融引き締め、増税、変動為替相場制への移行といった方策を取るよう促した。さらに、スリランカの支援要請に対して「債務の持続可能性に向けた進展が融資の条件になる」と述べた。他人事のように形式的な対応で終わっている。一方、インドの協力が表明されている。日本も参加表明している。
小麦・パラジューム・アルミ・ニッケル・天然ガス等世界の供給に占める割合の多い資源・食料価格が上昇。コロナによるサプライチェーンの麻痺が解消されない状況でインフレの種を増やす結果となっている。今回の欧米の対応は経済運営上、自分で首を絞める状況となっており、金融政策の足かせとなってきた。ここにきて、ロシア・ウクライナの石油・天然ガス・石炭・小麦・トウモロコシ・飼料・肥料さらに半導体関連の主要原料の供給に関して警鐘がなり始め、欧米諸国のインフレ(物価上昇)の追加要因となった。市場は、サプライチェーンが国家体制(政治要素)とは別に、複雑に絡み合っている現実を認識し米国主導のロシア中国を除いた全く別の仕組みを作ろうと始めている。物価が上昇し、国民生活に影響が出ており、さらにコロナによるパンデミックも沈静化しているわけではない。
一方で、欧州では懸念の声が上がり始めたが、米国は大丈夫との安心感が前提となって今の相場が形成されている。米国が不況ないしスタグフレーションに陥る可能性を全く考慮していない。世界恐慌に近い状況になる可能性が高い。
米国の人口は3億人、英国・フランス・ドイツ等の西欧諸国の人口はそれぞれ4~6千万人、そのほとんどが移民で構成されている。過去、植民地時代その後の資本主義で潤ってきた国なのだろうか。ロシアでさえ1億数千万人。これに対して人口規模で異なっており、さらに植民地政策で苦汁をなめたインド(英国の植民地)・中国(アヘン戦争・日中戦争)のように14億人台を超える国民の生命・食料・生活を維持するする政治に対する姿勢(国家体制)・主義主張の違いがあってもおかしくはない。第1次・第2次大戦後独立した中東諸国・南米・アフリカ諸国にとっても同じである。既存のグローバルスタンダードの意義が問われている。インフレの一つの原因であるロシア産資源(原油・天然ガス)に対する制裁が完全に尻抜けとなった。ルーブル決済は企業の問題として制裁対象から外すとの判断が、22年5月16日EUの行政執行機関、欧州委員会から発表された。
さらに、22年5月17日米財務省当局者がロシア産原油の全面的な輸入禁止措置に代わる措置として、欧州各国に対し関税を課すよう提案すると表明。原油供給量の逼迫を低減する方向に舵を切った。しかし、制裁対象のロシア産原油は、インド・中国が引き受けており総量の調整は不可能となっている。石油価格の相場形成における米国の地位は低下、OPECプラス等のロシアを含む中東産油国が中心となっている。米国の指導力の低下が今回も見られた。
資金力・技術力に劣る資源を持つ国(ロシア)の主張が始まったと思われ、オイルショック(石油危機)時と同じ背景がそこにある。ただし、相手がロシアという軍事力のある大国であることは厄介である。
インフレの解決策である中央銀行による利上げが本当に特効薬となるか試されている。世界各国の実体経済の悪影響が出始めており、統計数値を待っている市場参加者が気づいた時、すでに遅いというデフレ・スタグフレーションの可能性は否定できない。欧米でインフレが進み実体経済への影響が統計数値に表れ始めた。アナキスト(無政府主義)である企業の収益確保が優先となっている。企業による価格転嫁による収益確保に対して原材料費・人件費高騰が減益要因となり、最終需要者である消費者にとって不利になり貧富格差の拡大がさらに進む結果となりつつある。そこでマルクス(共産主義を唱えた)が生まれたドイツを始めとした欧州各国がエネルギー関連企業から利益を還元するように要請を始めている。共産主義(社会主義)的発想(平等)の導入に変わりない。自由資本主義の欠陥の補完の動きとみるべきか。さらに、利上げによる副作用である企業倒産・失業対策が必要となる、スタグフレーションの状況となりつつある。ある意味でシンギュラーポイントがどこなのかが試されている。
さらに、ウクライナの戦後処理・再生費用が7500億ドル規模になりウクライナ大統領は支援を呼び掛けているが、欧米諸国・IMFを含めその余力はない。ロシアにその費用を持たせるには、ロシア本土に攻撃を仕掛けプーチン大統領を敗北に導く以外に方法はない。今一生懸命ロシアの戦争犯罪の証拠を探しているが、第2次大戦時の東京大空襲・沖縄戦の犠牲者に比べれば、さらに広島・長崎への原爆投下の行為と被害者の戦後の対応(実験の資料集めは継続されている事実)はどうなのだろう。
一方、仮想通貨の普及の動きに合わせ、ドル基軸通貨の脆弱性・米国軍事力の圧倒的な優位性が失われていること・世界政治経済の指導力に対する警鐘等が露見する結果となりそうである。第2次大戦後、ブレトンウッズ体制を基軸とするドル基軸の仕組み(固定相場;1オンス35ドルに固定)で戦後の欧州復興を後押ししたが、1971年、金本位制を放棄したニクソンショックが何であったかが問われている。
モルガン一族のように、第一世界大戦時と同様に、第2次大戦前に欧州にあった金を米国に集中逃避させた。その資本家が、第2次大戦後、欧州の復興に合わせ、米国から金の還元・流出が始まり、その流出量が多く、ドルの価値が大幅に低下した。金の産出量に限界があり、通貨の力(国力)を図る基準としての機能に限界(弊害)があったことも一つの原因である。その影響で米国経済が悪化。第一次大戦後の世界恐慌と同様の危機を避けるために、そして米国経済を維持するために、金本位制を放棄、米国ドルを基準とした通貨機能を創出し、一方で株式・債券・商品の取引市場を拡充、さらに資本市場を米国に集中させ、ドルを基準とした市場を形成した。さらに当時の圧倒的な軍事力を背景に、固定相場制であった通貨に変わり、変動相場制導入を主要国に従わせ、ドル規格を標準のものにし、ドルを金に変わる基準通貨に作り上げ、株式資本主義を盤石なものにして今に至っている。
ウクライナ国民の犠牲者が急増するも徹底抗戦としてロシアへの攻撃を中断することもなく、停戦交渉のテーブルに載っていない。欧米からの武器供与で反転攻勢との報道があるが、ロシアの人口と資源・軍事力さらに総動員法に向かっている現実との比較から、そろそろ落としどころを米国が進める時期にあるが、それができない。まるで第二次世界大戦時の(沖縄戦・東京大空襲)にも拘わらず、本土防衛・決戦とした日本軍の連合国軍への対応と同じ現象となっている。終戦のための方法について、生物兵器・化学兵器・核爆弾の使用が報道されている。第2次大戦時、最終的に核爆弾を実施したのは米国であった歴史を忘れてはならない。唯一の被爆国であり、日本の航空域制限等、今も戦後の体制は継続している。戦略的に、今回はロシアに核のボタンを押すように追い詰めているようだ。第二次大戦終戦(1945年)前後に生まれた、バイデン大統領・ウクライナのゼレンスキー大統領。プーチン大統領等『戦争を知らない子供たち』(北山修作詞)の世代のリーダーが世界を動かしている。
マスク着用問題等において『人間の自由の権利』主張が標榜され、コロナによる感染は個人の自己責任として片づけられてきた。今でも世界最大のコロナによる感染者数・死亡者数を誇っているのは米国である。自己責任としている。
自分を守り隣人(他人)に移さないようにする最善の方法がマスク着用であった。第一次大戦時『スペイン風邪流行』対応はワクチン・治療薬がなかったこともあり、戦争による死亡者よりスペイン風邪による戦意喪失とその犠牲者の方が多く戦争継続が困難となりドイツ軍敗退による戦争終決となった。
各国政府は自由主義・個人主義の名目で経済再生優先としてきた。一方、コロナ対応で中国主要都市でのロックダウン措置導入の動きが報道され、中国経済の弱体化を専門家・マスコミは報道している。また、中国を含めコロナ感染拡大によるパンデミックは終わっていない。
サプライチェーン・物流問題の長期化が懸念され始めた。トランプ政権時『自国第一主義』として中国経済制裁の一環で始められた関税はバイデン政権でも継続され米国インフレの一原因となっている。半導体・各種工業製品等の中国サプライチェーンの複雑さが認識され始めたところで、ウクライナ・ロシアにおける食料・資源の重要供給先であったことがウクライナ戦争で浮き彫りになった。22年5月11日、バイデン米大統領は、ロシアによるウクライナ侵攻が世界的な食料価格の高騰を引き起こしていると非難、対して22年5月12日、ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ紛争を受けて西側諸国がロシアに科した厳格な制裁措置が世界的な経済危機と破滅的なインフレを引き起こしたとして双方責任転嫁している。
しかし、株式市場の下落、プライベートバンク等にみられるファンドの毀損、市場参加者機関の市場撤退による現金化が報じられている。市場が縮小方向にあることに変わりはない。インフレが現実のものとなり、中国関税・NATOを巻き込みウクライナへの武器供与による戦争拡大のきっかけを作った米国バイデン政権の失策であったことが明確になりつつある。覇権の競争と見過ごすことはできるのであろうか
世界経済の枠組みに亀裂が生じ、各国のインフレが国内問題となり、ロシア・中国等の結束を固める形となって政治経済ブロックの鮮明化が問題視され始めた。自由民主主義を守ると称して主導権を発揮した結果であろうか。
パンデミックが収まらず、サプライチェーン問題も解消されず、ウクライナ戦争が、ロシア対米国(NATO)の対立構造となってきた。さらに仮想敵国として中国もその対象としている。
小麦・食用油(トウモロコシ・パーム油)を含めて食糧危機の報道が始まった。異常気象の影響で世界的な穀物の不作が予想されており、綺麗ごとでは済まない古米・古古米の取り合いとなっている。ウクライナの昨年収穫の穀物輸送に注目しているが農地が荒れており、戦争で男手がなく今年の収穫は半分以下となろう。食糧危機が現実のものとなり、先進国もインフレに絡めて、後進国を補助・救済するとしても資金調達に問題が生じ始めている。欧米の大半が赤字国である。国力に限界がある。さらに、異常気象の影響により耕作物の減少が予想されており、インドのように輸出規制をする国が増えている。本格的な食糧危機は、これからである。



2023年11月30日更新


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